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AliExpressで買ったCPUが本物かチェックしてみた (E5-2650L V4)(Linux)

Checking if the CPU I bought on AliExpress is genuine (E5-2650L V4) (Linux)

 

はじめに

 

自宅サーバの電気代が先月、先々月とかなり高く、Webサーバの消費電力を見直すことにしました。現在使用していたCPUはCore i7-6800K。6コア12スレッドで10年近く前のものですが、性能的には満足していました。しかし、TDP(設計上の最大放熱量)が140Wと、最近の電気代を考えると少し負担に感じていました。

 

そこで、LGA2011-V3ソケットに使えるCPUを探していたところ、Xeon E5-2650L v4に行き着きました。

 

Xeonと聞くと消費電力がかなり大きいイメージですが、E5-2650L v4の「L」は「Low-Power」の意味で、14コア28スレッドを持ちながらTDP65Wという驚異的な省電力設計(当時)となっています。

 

6800kとのスペックを比較したものがこちらです。

 

項目Core i7-6800KXeon E5-2650L v4
コア数614
スレッド数1228
ベースクロック3.4 GHz1.7 GHz
最大ターボ3.8 GHz2.5 GHz
TDP140W65W
キャッシュ15MB (L3)35MB (L3)
ソケットLGA2011-3LGA2011-3
メモリ対応DDR4-2400DDR4-2400
ECC対応なしあり
発売年20162016

 

 

Technical Cityで性能比較をすると、コアの割に性能はそこまで高くはないですが、これは主にクロック速度の違いが原因です。このような比較サイトでは、マルチスレッド性能だけでなくシングルスレッド性能も重視されるため、低クロックのXeon E5-2650L v4は期待されるほどのスコアを出せません。

 

しかし、消費電力の面では大きなメリットがあります。TDP 65WというCore i7-6800Kの半分以下の消費電力は、常時稼働させる用途では魅力的です。電気代を考慮すると、長期的にはお得になると思い、個人的にXeonを選ぶ価値があると判断しました。

 

ただ、Xeon E5-2650L v4はトレー版のみが存在するCPUで、一般的なリテール版(箱入り)は製造されていません。これはサーバー向けのOEM供給専用CPUだからです。

 

このため、以下の特徴があります

 

  • Intel公式サポート対象外:個人ユーザー向けのサポートページには掲載されな
  • 動作保証なし:Intelからの直接的な品質保証は受けられない(ショップからの保証のみ)
  • 偽物かどうかの判定が困難:公式の確認手段が限られる

 

つまり、購入して実際に動作させて確認するしか、本物かどうかを判断する方法がないのが現状です。

 

AliExpressでの購入

 

今回、Xeon E5 2650L v4をあちこちで調べてみましたが、大体7000円〜15000円ぐらいで、たまにフリマサイトで5000円前後で出品されていることもあるみたいでした。色々調べているうちに、1万円を超える価格が多く、もう少し安く手に入らないかと思っていたところ、アリエクで良さそうなものを見つけました。
商品価格は送料込みで4,896円で、同程度の性能のCPUを新品で購入することを考えれば、非常に安価で、私にとって魅力的でした。

 

ただし、アリエクなどの海外通販サイトでは以下のリスクがあることも事実です

 

  • 偽造品・改造品の可能性:刻印を変更した別のCPU
  • 不良品のリスク:動作不良や寿命の短い個体
  • 返品・交換の困難さ:海外発送のため時間とコストがかかる

 

CPUを購入してから5日後には届き、想像以上に早くて驚きました。実際に届いたものが以下の画像です。
JNというマーキングがされていますが、中古CPUの流通経路元を表すものなのか、検査済みマークなのかよくわかりませんが、とりあえず外観は本物にみえますね
(後で販売者に問い合わせたところ、購入した業者の検査済みマークとのことでした)

 

 

今回は、Linux環境でシステム情報取得機能を使って、購入したCPUが本当にXeon E5-2650L v4なのか、そして正常に動作しているのかを検証してみました。

 

検証方法・結果

 

Windowsと比較して、Linuxは以下の理由でCPU検証に適しています

 

  • 詳細なハードウェア情報へのアクセス:/proc、/sysファイルシステム
  • 豊富な検証コマンド:lscpu、dmidecode、hwinfo等
  • 改ざんが困難:システムレベルでの情報取得
  • コマンドライン操作:自動化しやすく、ログも残しやすい

 

openSUSE Tumbleweed環境で実施した検証結果を紹介します。
まずは/proc/cpuinfoをみていきます

 

$ cat /proc/cpuinfo
processor       : 0
vendor_id       : GenuineIntel
cpu family      : 6
model           : 79
model name      : Intel(R) Xeon(R) CPU E5-2650L v4 @ 1.70GHz
stepping        : 1
microcode       : 0xb000040
cpu MHz         : 1449.112
cache size      : 35840 KB
physical id     : 0
siblings        : 28
core id         : 0
cpu cores       : 14
apicid          : 0
initial apicid  : 0
fpu             : yes
fpu_exception   : yes
cpuid level     : 20
wp              : yes
flags           : fpu vme de pse tsc msr pae mce cx8 apic sep mtrr pge mca cmov pat pse36 clflush dts acpi mmx fxsr sse sse2 ss ht tm pbe syscall nx pdpe1gb rdtscp lm constant_tsc arch_perfmon pebs bts rep_good nopl xtopology nonstop_tsc cpuid aperfmperf pni pclmulqdq dtes64 monitor ds_cpl smx est tm2 ssse3 sdbg fma cx16 xtpr pdcm pcid dca sse4_1 sse4_2 x2apic movbe popcnt tsc_deadline_timer aes xsave avx f16c rdrand lahf_lm abm 3dnowprefetch cpuid_fault epb cat_l3 cdp_l3 pti intel_ppin ssbd ibrs ibpb stibp fsgsbase tsc_adjust bmi1 hle avx2 smep bmi2 erms invpcid rtm cqm rdt_a rdseed adx smap intel_pt xsaveopt cqm_llc cqm_occup_llc cqm_mbm_total cqm_mbm_local dtherm ida arat pln pts md_clear flush_l1d
bugs            : cpu_meltdown spectre_v1 spectre_v2 spec_store_bypass l1tf mds swapgs taa itlb_multihit mmio_stale_data
bogomips        : 3398.10
clflush size    : 64
cache_alignment : 64
address sizes   : 46 bits physical, 48 bits virtual
power management:

 

続けてdmidecodeコマンドを使い、確認をしていきます。

 

$ sudo dmidecode -t processor
# dmidecode 3.6
Getting SMBIOS data from sysfs.
SMBIOS 3.0 present.

Handle 0x0073, DMI type 4, 42 bytes
Processor Information
        Socket Designation: SOCKET 2011
        Type: Central Processor
        Family: Xeon
        Manufacturer: Intel
        ID: F1 06 04 00 FF FB EB BF
        Signature: Type 0, Family 6, Model 79, Stepping 1
        Version: Intel(R) Xeon(R) CPU E5-2650L v4 @ 1.70GHz
        Voltage: 1.2 V
        External Clock: 100 MHz
        Max Speed: 4000 MHz
        Current Speed: 1700 MHz
        Status: Populated, Enabled
        Upgrade: Socket LGA2011-3
        Core Count: 14
        Core Enabled: 14
        Thread Count: 28
        Characteristics:
                64-bit capable
                Multi-Core
                Hardware Thread
                Execute Protection
                Enhanced Virtualization
                Power/Performance Control

 

/proc/cpuinfoはカーネルが検出した情報、dmidecodeはSMBIOS情報を表示しており、この2つの情報源の整合性チェックでCPUが偽物かどうか、信頼性の高い確認が可能です。

 

逆に言えば、この2つのどちらか(例えばCPU ID、Family、Stepping等)が異なっていた場合、CPUの偽装が考えられるということです。
また、コアが少なく認識されている場合も、偽装または故障・不良品の可能性があります。

 

マイクロコードバージョンの0xb000040は、このCPU世代で使用される正当なマイクロコードバージョンの形式となっています。コア数、キャッシュサイズ、対応命令セットなどが製品仕様と一致していることも確認できました。(参考にしたリンクはこちらです)

 

次にCPUの温度をsensorsコマンドでみていきます。

 

$ sensors
coretemp-isa-0000
Adapter: ISA adapter
Package id 0:  +36.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 0:        +29.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 1:        +29.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 2:        +29.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 3:        +30.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 4:        +30.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 5:        +30.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 6:        +29.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 8:        +30.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 9:        +30.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 10:       +30.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 11:       +29.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 12:       +29.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)
Core 13:       +29.0°C  (high = +63.0°C, crit = +73.0°C)

 

温度に関しても室温+1〜2度と正常範囲内で動作していますね。次にメモリをみていきます。

 

$ sudo dmidecode -t memory | grep Speed
        Speed: 2400 MT/s
        Configured Memory Speed: 2400 MT/s
        Speed: 2400 MT/s
        Configured Memory Speed: 2400 MT/s
        Speed: 2400 MT/s
        Configured Memory Speed: 2400 MT/s
        Speed: 2400 MT/s
        Configured Memory Speed: 2400 MT/s
        Speed: 2400 MT/s
        Configured Memory Speed: 2400 MT/s
        Speed: 2400 MT/s
        Configured Memory Speed: 2400 MT/s
        Speed: 2400 MT/s
        Configured Memory Speed: 2400 MT/s
        Speed: 2400 MT/s
        Configured Memory Speed: 2400 MT/s

 

メモリも定格の2400MHzで正常に動作していました。元々3300MHzのメモリでしたが、CPUの仕様に合わせて周波数を下げて動作してくれています。

 

まとめ

 

今回の検証により、アリエクで購入したXeon E5-2650L v4は正規品であることが確認できました

 

購入価格は送料込みで4,896円と非常に安価で、元々使用していた6コア12スレッドのCPUから14コア28スレッドへの大幅な性能向上を実現できました。消費電力も140Wから65Wへと約半分に削減され、コスパ的に良かったと満足しています。

 

海外通販サイトでの購入には一定のリスクが伴いますが、保証や返品対応があるプラットフォームを選ぶことでリスクを軽減できます。この年代のCPUを今さら偽装するメリットは薄いため、偽物のリスクは比較的低いものの、動作不良や寿命の短い個体に当たる可能性は考慮が必要です。某フリマサイトなどの個人間取引よりも、返品・交換対応があるプラットフォームの方が安全じゃないかなと個人的に思います。
評価の高い販売者を選び、商品説明をよく確認することが重要です。到着後は必ず動作テストを行い、問題があれば早期に連絡することをお勧めします。今回購入したアリエクのショップでは、90日以内であれば返品・返金対応してくれるということでそこも魅力的でした。

 

とはいえ、信頼できるショップから購入するのが最も安全です。同様の購入を検討されている方は、ぜひこの検証手順を参考にして、安全で経済的なCPUアップグレードを実現してください。

 

おわり

 

今回購入した商品はこちらです。